音楽映画界の新風ジョン・カーニー三選

音楽映画界の新風ジョン・カーニー三選

ジョン・カーニー監督、ご存知でしょうか?
1972年、アイルランドはダブリン生まれ。ロックバンド・フレイムスのベーシストを経て、ミュージック・ヴィデオ製作などに携わるようになり、2001年「November Afternoon」(日本未公開)で映画監督としてデビューしました。
…わかりませんか?
では、あの「はじまりのうた」と、絶賛公開中の青春バンド映画「シング・ストリート 未来へのうた」の監督、と言えばわかっていただけるでしょうか?
よかった!お分かりいただけたようですね!では、続けますね。
そんな彼は、日本でも単館、いわゆるミニシアター系で高い人気を博しておりますが、実は日本公開は三作品のみ。
今回は、その三作品の魅力を、一挙に紹介したいと思います。

① ONCE ダブリンの街角で(2007)
監督の出身地でもあるダブリンを舞台に描かれたこの映画は、約12万ユーロ(日本円で約1300万円)という低予算でしたが、主題歌「Falling Slowly」が第80回アカデミー賞歌曲賞を受賞し、サウンドトラックはグラミー賞にノミネートされるなど、世界の賞レースで高い評価を受けます。
また、全米でたったの2館からの公開スタートでしたが、SNSなど口コミで話題を呼び、最終的には全米140館まで拡大し、興行的にも大成功をおさめます。また、アカデミーでの受賞も手伝い、サウンドトラックは全米チャートで2位を獲得するまでの人気を得ました。

【解説】
ダブリンのストリートでギターをかき鳴らす30代の男(グレン・ハンサード)は、その日、ストリートでチェコ移民の花売り女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会います。
自身もミュージシャンだと明かした彼女の音楽センスに惚れ込んだ男は、自分と一緒にCDを作成してほしいと依頼します。そのレコーディングはトントン拍子で上手くいき、二人の心の距離も徐々に縮まっていくのでした。しかし、彼女には、男に入っていない秘密があるのでした。

この映画の最大の持ち味と言えば、もちろん音楽です。アコースティックギターとピアノという、スタンダードな曲作りながら、音の上手さについつい聞きほれてしまう魅力があります。また、主題歌および楽曲の作成をミュージシャンでもある主演の二人が行っていることで、より生っぽい演奏シーンになっており、思わず引き込まれてしまいます。
さらに、録音風景がとてもリアルである点も見どころのひとつ。これは、監督自身がアーティスト経験があることが一番大きな要因ですが、出演者・スタッフを含め、映画関係者と音楽関係者が入り乱れていたこともより良く作用したようです。
また、主演の二人は今作が演技初挑戦であり、今作撮影終了後に交際を始めるなど、熱の入れようもうかがえます。
切ないラブストーリーに乗る主題歌はまさに名曲。その後ミュージカルにまでなる今作は、ジョン・カーニーの音楽映画監督としての才能が開花した作品と言えるのではないでしょうか。

② はじまりのうた(2013)
ジョン・カーニーによる2013年の音楽映画は、ニューヨークが舞台。今作でシンガーソングライターを演じたキーラ・ナイトレイは、初となる歌唱シーンを披露しています。
また、彼女の恋人役として、人気バンドMaroon 5のフロントマン、アダム・レヴィーンが映画初出演をして、楽曲も提供しています。映画の中でキーとなる「Lost Stars」は、二作品連続のアカデミー賞楽曲賞へノミネートされています。

【解説】
映画への楽曲提供をきっかけに故郷英国から渡米した恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)についてアメリカへ渡ったグレタ(キーラ・ナイトレイ)でしたが、遠征続きのデイヴと破局し、自暴自棄になっていました。
英国へ帰る前の晩、友人のライブに飛び入りで参加して歌った彼女に目を止めたプロデューサーがいました。彼の名前はダン(マーク・ラファロ)。落ち目でしたが才能あるプロデューサーの彼は、グレタに原石を見出し、一緒にアルバムを制作しようと持ち掛けます。

今作も、前作「ONCE ダブリンの街角で」と同じく、楽曲製作というストーリー展開は全く一緒です。ですが、今作ではダンとグレタの関係性は、「ONCE~」のそれとは少し違います。
今作でキーとなるのは、いわば師弟愛。男女であり、大人同士でありながら、ともすれば安直に恋愛関係に陥ってしまいそうなところを、師弟愛に終始させているところがとても素晴らしいのです。お互いがお互いを本気で尊敬しあい、信頼し合う関係性が、眩しいくらい切ないのです。
さらに、街の喧騒とともに、ゲリラライブ的に楽曲を録音する、このストーリー展開です。こんなのワクワクするなっていうほうが無理です。街中で出会った少年たちを巻き込んだり、屋上に忍び込んだり、地下鉄で警備員に追いかけられたり、そんなシーンのいちいちから、音楽の楽しさが満ち溢れています。
さらに、音楽界の未来を示すような、希望に満ちたラストシーン。監督の音楽愛がひしひしと伝わる、直球のハートフル・ストーリーです。

③ シング・ストリート 未来へのうた(2016)
さて、そんなジョン・カーニー監督の最新作は、彼の半自伝的作品とも言われる、青春バンド映画です。舞台はダブリンの不良学校、主人公は冴えない根暗な15歳、バンド結成のきっかけは可愛いあの子!なんてことでしょう、そろい踏みといったところですね。王道中の王道、ベタ中のベタ。しかし、ベタも軽やかにこなす音楽センスに脱帽です。

【解説】
不況ゆえに両親の不和に拍車がかかり、殺伐とした家庭内で息をひそめるコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は15歳。金銭面から、不良ばかり集まるダウンタウンの学校への転校が余儀なくされます。
新入りいじめや教師からの理不尽な罰則に苦しむコナーでしたが、謎の美女ラフィーナ(ルーシー・ボーイントン)に出会い、バンド活動を始めたことから人生は変わり始めます。

今作の最大の魅力はもちろんバンド音楽なのですが、上記二作品と大きく違うのは、その時代性。80年代のダブリンという、監督自身が生きてきた時代だからこそ色濃く香る時代背景と、その当時流行っていた音楽を必死にモノマネする少年たちがとにかくチャーミング。音楽好きならワンフレーズで元ネタが分かってしまう、まさにモノマネ楽曲ばかりなのですが、だからこそ耳馴染みが良くて思わず身体が揺れてしまいます。
さらに、コナーの兄ブレンダン(ジャック・レイナー)との兄弟愛や、バンド仲間との楽曲製作の風景など、見所が音楽にとどまらないのがジョン・カーニー作品の素晴らしい点。
ファッションやメイクに反映される80年代の空気も、その世代を知らない若い観客には新鮮に、知っている世代には懐かしく感じられ、誰にも親密な映画なのです。

いかがでしたでしょうか?
映画好きにも音楽好きにも勧められる三選でした。
最新作「シング・ストリート 未来へのうた」で、従来通り劇中の音楽や演奏シーンにこだわりながらも、さらに青春の苦みや人間ドラマを濃密に描くことでより深化したジョン・カーニー作品から、これからも目が離せません。

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